2009年07月07日

「阿片茶」を読む

 『ある朝、Aの逝去を報じる記事に出くわした。彼はホテルの部屋を借りていたが、その部屋の窓際に置かれたひじかけ椅子に座ったまま死んでいたのだ。私は死亡記事を読んで、その窓が私のアパートの真向かいに位置していることに気づいた。Aは自分の選択したやりかたでこの世から去ったのだ。私のすまいを見渡すことのできるあの窓際が彼の死に場所だった。彼はそこから自分がずっと前に結婚祝いとして私に贈ったクスノキのたんすを目に留めることができた。

 私を愛し、理解してくれたこの最後の男性に対して、私は深く感謝している。そして彼にこの書物を捧げたいと思う。』

 伯爵令嬢の最後の愛は渋い。地上では報われなかった恋はあの世で報われたと思いたい。
「阿片茶」、ビアンカ・タム著、内藤儀訳、集英社
posted by レオン at 07:23| Comment(0) | 読書日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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